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批評

批評風景「ヒバリ村の救出劇」

本文なし
 以前から「解題をやってくれ」というご意見を頂く。
 今回、新しいシナリオをプレイする機会に恵まれたので、解題ではないものの、どのように批評しているか、プレイ中の思案をまとめてみた。



 「ヒバリ村の救出劇」の張り紙を見る。陰惨なイメージ画像のわりに、ほのぼのとした説明文。
 始めますか。


 ヒバリ村の宿で眠る冒険者。ドアを乱暴に叩く音で、一行は目を覚ます。
 訪問客は村長と女性だった。なんでも、女性の一人娘が、ゴブリンにさらわれたという。


 まあ、切羽つまった状況なんだろうな。などと思うが、ありがちな導入という点も含めてピンと来ない。
 BGMの使い方が良くない。緊張感をもう少し煽る曲を選びたい。無音でもいいだろう。

 ※
 第一、好奇心が旺盛だからって、夜中に化物へ近づく9歳の少女っつうのは……どうしようもない。可愛げがあるという話にはならない。 




 村長に先導され、ゴブリンが住み着いているという廃鉱へ。
 村長が言うには、少女の父親が一人、先行して乗り込んでいるという。しかしおそらくは……

 さっそく、廃坑の捜索をはじめる冒険者たち。
 しかし、そこにあったのは、無残に惨殺されたゴブリンたちの死体だった。
 


  この異常事態の犯人は誰か、アタリをつけてみる。
  第一は娘の父親だろう。怒り狂ってゴブリンを惨殺したと思われる。
  第二は別のモンスターの可能性。同じ洞窟内で縄張り争いなど、よくある話だ。
  第三は……第三者の人間。冒険者、黒魔術師など、コレもありうるが、導入から飛躍しすぎな感があるので、可能性は薄いかな。
  まあ、だいたいそんなところだろう。捜索を続ける。

  プレイしていて気づくのが、全体的に丁寧で、細かな作り込み。
  捜索すると、気になった点がピックアップされるのは、CWだと目新しい。
  状況の描写も細かにテキストで語られている。
  こういった点は好印象だ。


 捜索のうちに出てくる、ゴブリンたちの死体、死体、死体。
 どれもコレもが凄惨なことになっていた。


 問題はこの点で、状況を見せたい意図はわかるが、その状況自体が弱い。
 犯人のアタリはついている、予想を崩す情報もないから、ミステリーはない。悲惨とはいえ相手はゴブリンだから、同情もわきづらい。
 第一、「ゴブリンの洞窟」の帰り道はこんな状況だろう。いまさらヒデェ、とも言いづらいうえ、新鮮味がないのだ。
 細かに描写しているのはいいんだけど、目先の精緻さに走った点は否めない。変化のないBGMと相まって、心動くことなく、淡々と捜索が進んだ。

 一部、鍵のかかっている部屋があったが「盗賊の手」で解除。一部屋を残して踏破。


 扉を見つける……開かない。鍵がかかっているわけでもない。
 見つけた斧で強引にぶち破る。
 扉の奥にいたゴブリンの残党を倒し、巨大なツボを調べてみると、中にはさらわれた女の子が入っていた。


 女の子を助けたあと、洞窟で何がおこったか聞けたり、父親の死などを伝えたりできる。
 父親の死を伝えた場合、冒険者の一人が「いま伝える必要があったのか」と疑問を呈すのだが……
 これはPCの発言ではなく、作者の疑問だろう。
 プレイヤーの選択を丁重に扱いたい。
(もちろん、極めて常識的な疑問だ。ならば話を膨らませない限り、この選択肢は必要ないだろう)

 ツボのとなりに宝箱があるのだが、中には読めない字で描いてある本がある。
 「解読」を使うとゴブリンの日記だとわかり、近況と顛末がわかる。しかし、わざわざ解読キーコードを使って明かす内容ではないだろう。お互いの行動と顛末にも影響はないのだから。


 女の子を救出し、脱出だ。
 廃坑の出口にさしかかったとき、ゴブリンたち……をぶっ飛ばしながら現れたのは、トロールだ!
 正攻法では勝てない。と踏んだ冒険者は、いったん廃抗の中へ逃げることへ。
 画面端のオートマップを見る。左下の通路をみると、ぐるりと一周していて、後ろから追いかけてこられても、道なりに逃げ切れそうだ。
 思惑通りに、突破。洞窟から脱出。
 しかしトロールに追いつかれ、女の子を担いで逃げていた冒険者の一人がぶっ飛ばされる。やむなく戦闘へ。
 だが、トロールとの戦力差はいかんともしがたく、なんとか攻撃をしのいでいると、トロールの状態に変化が……日光を浴びて石化してしまったのだ!



 トールキンかよ。
 すんなり逃げ帰る、でよかったのではないか。倒せない相手なら別件として扱っていい。あるいは、トラップをしかけて大逆転なり。
 というのも、トロールで石化なんて設定は、現在は死んでいるわけで。ホビットの冒険を知らないとわからない話だ。タナボタ式に倒したものの、カタルシスは薄い。
(しかもEDでトロールを調べると「つらぬき丸」が出てくるんだ。おいおい……)


 ……村長の声がする。目を覚ますと、もう陽が高い。
 そうだ、廃坑から生還し、宿屋で眠りについたのだった。
 随分とぐっすり寝入ったらしい。すでに出発の時間だ。

 村には立派なトロールの巨像ができた。
 助けた少女と、その母親に見送られ、冒険者たちはリューンへの帰路へついた。
  




 総評は、凡作。
 とりあえず、ストーリーの旨みはゴブリンまわりの描写なんだけど、前にも書いたように、状況が弱いし、真相は解読キーコードが必要という点も問題。よしんば判ったとて、よくありそうな話である。お互いやることにも変わりはないわけで……どこにも葛藤がないからエレジーも薄い。
 小奇麗さはあるので、シナリオとしては論外だが、妄想の出汁としてはうってつけだろう。内容の理解よりもPCのリアクションに頭を割く、そんな人に勧めたい。
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