「コンセプト」 過去、Groupaskは外部の意見を取り入れてエンジン改変を行ってきたわけだが、どうやら自らのコンセプトより、外部の意見を尊重してくれていたようだ。
さて、アイデアを出す人間が守らなければいけない事があるとすれば、それは何だろうか。
私の定義は、オリジナルを理解し、設計やコンセプトを継承する、あるいは理解の上で改変をする、ということ。
1.20のヘルプを開いてみよう。
「目次」から「構成」を選び、「マニュアル」を開く。
「第1章 Cardwirthとは」という記事に、こう書いてある。
『 徹底した数値の隠蔽
CardWirth では徹底して数値の隠蔽を行っています。数値の複雑な組み合わせで構成されるキャラクターの個性も、プレイヤーは見る事ができません。CardWirth は数値で楽しむシミュレーションゲームではありません。冒険の雰囲気を楽しむロールプレイングゲームなのです。
…CardWirth には終わりがありません。シナリオの数だけ冒険があり、そしてそのシナリオは別付の CardWirthEditor により自由に作成する事ができます。次の冒険の依頼人はあなたかも知れません…』
もう常識だろう。
皆さんもよく知ってる……
はずなのだが。 さて、ここで1.60のスクリーンショットを見て頂きたい。
――Cardwirthのコンセプト「徹底した数値の隠蔽」を思い出そう。
「徹底した数値の隠蔽」だ。「数値の隠蔽」。 レベルの表示はシナリオ中に必要だろうか? おそらく、こう書いただけでうっすら答えが理解できた方もいるだろう。そう、まさしくそのとおり。
それを証明する前に、まずは1.20を理解したい。
1.20のスクリーンショットだ。画面上に出ている数字はどれだろう?
そう、冒険者の名前と、SPだけだ。名前(あるいはカード)の方はプレイヤーの任意なので関係はない。
SPの方はどうか? よく見てみると、冒険するアクティブウィンドウからは切り離して表示されていることが判る。
つまり、
プレイヤーが操作するウィンドウの中に数字は一つも表示されていないのだ。
といっても、実際のところは頻繁に数字を見ている。
数字はどこにあるのだろうか。
冒険者を右でも左でもいいのでクリックしてみよう。
早速数字が出てきた。先ほどとは違い、ためらいなく冒険者を数字で表している。
つまり、こう結論付けることができる。
1.20はプレイヤーがウィンドウを展開するまでは数字を表示しない。 大分はしょっているが、そういうこと。
レベル表示の証明に戻ろう。
1.28からプレイヤーのカードにレベルの表示が出るようになった。さて、これはコンセプトに叶い、あるいは理解したうえで改変したものか否か。
ところで、みなさんは
レベルをどのタイミングで確認するだろうか?
ほとんどの方は、
シナリオのレベルに合わせて冒険者を選ぶときに確認しているはずだ。宿の宿帳を見て、シナリオにあった冒険者を選ぶ……
だから、当然ここでレベルは表示される。
これは的確な表示と言ってよい。なぜなら
コンセプト通り、プレイヤーの開いたウィンドウの中で必要な数字が示されているからだ。
ひるがえって1.28~1.60の画面を見てみよう。
これは冒険者のカードが表示されている限り、一緒にレベルが表示され続ける。消すことはできない。
いうまでもなく、これは「徹底した数値の隠蔽」に真っ向から反している。
そもそも、冒険中に冒険者レベルの確認が必要なのだろうか?
シナリオのプレイ中を思い出してみよう。Cardwirthは張り紙に対象レベルが表示されるうえ、シナリオ中にレベルは変動しない。デバッグモードでもない限り。
それでも確認したかったら右クリックすれば良い。先ほどあげた左右クリックのウィンドウが出てくる。
もう判るはずだ。
冒険者カードのレベル表示は2つの意味で論外なのである。
ひとつは数値の隠蔽のコンセプトを破壊していること。
もう一つは、
その破壊してまで表示した数値が何の役にもたってないって事だ。
(これと「バージョン1.28 3つの改悪」を合わせて読むと、1.28までを改変した方々がどんだけボンクラかわかるかと)
最初に戻ろう。
ここまで踏まえたうえで、私家版に共通する問題点とは何か。
――
オリジナルへの理解が明らかに足りていないのだ。
おかしな話だ。日頃から口酸っぱく「数値隠蔽!数値隠蔽!」と唱えている割に、画面にデカデカ表示された数字に気がつかない
矛盾。
ただゲームをプレイするならそれでも構わない。しかしエンジンをいじる段になると、そんなことは言っていられない。テーマに沿った古いエンジンがあるのだから、そこに込められた、明文化されていないコンセプトを読み解かなければならない。
誰も真面目に考察しないから、こんな大きな宿痾を何年も放置しているのだ。