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批評

要素を洗い出す

本文なし
   "知力"は弱い?

 まずお題。
 すめらぎサカナさんのシナリオ「魔法スキルの訪問販売」から。

【双狼牙】相当の威力のスキルが4レベルだったり、【烈梟刃】相当のスキルが5レベルだったりするのがおかしい、と思われる方も多いと思われますが、適正に使うステータスの性能差を考えた事はありますか?
 (中略)
「知力」:高くなるほど、アクションカードの【混乱】【手札交換】
     を自動選択する可能性が向上。

 これらを見て判るように、他のステータスと異なり、「知力」は戦闘において利点どころか、性格によっては不利な点しかありません。
 故に、知力適正スキルは、他のステータス適正のスキルよりも優遇されるべきと思いこのようなレベルに設定しました。



 なるほど。すめらぎサカナさんは正しい。
 正確には、現状認識は正しい。その上で言葉を見るなら反論はない。

 が、同じ考えを持っている人たちがいるなら、よく考えてみたい。
 そもそも、なぜステータスがシステムのレベルで並べられているのか。
 かみ砕いて言えば、ステータスごとに得意な、その能力値にしかできない行動があるにもかかわらず、それらが無視されて語られているのか。

 理由はお察しのとおり「それらが無視されているから」に他ならない。


  要素を洗い出す

 そう、「知力が弱い」という意見は、あらゆる適正のスキルがあらゆる行動を可能にしている――能力値の区別が消滅してしまっている、今日のCardwirthの現状を的確に表しているのだ。

 では初心に返って、このゲームが意図したステータスごとの行動、適正を発見するにはどうするべきだろうか。

 この20年で一本だけ、ゲームシステムとアクションカード、能力値の関係をリンクさせて"作られたと思われる"店シナリオが存在する。「交易都市リューン」だ。
 
 カンタンな分析をしてみよう。
 たとえば「居合切り」。必要な能力値は「筋力&勇猛性」だ。カード解説には「正当派剣士向け」とある……ここでゲームシステムのことを思い出してみる。
 アクションカードは? 攻撃の基本となる、ズバリ「攻撃」カードの適性は「筋力&勇猛性」だ。
 次に「悪魔の書」で勇猛性が上がる「型」を調べてみる。通常型だと「勇将型」と「豪傑型」のふたつだ。戦士タイプを作ろうと、これらの型を選択したプレイヤーは最低でも0.5は勇猛性がプラスされていることになる。
 二つの型とシステム、技能の兼ね合いを考えてみると、以下のことが判る。(Groupaskの考える)戦士系の精神的特徴は勇猛性がメインであり、好戦性はサブである。身体的特徴は「筋力」のみ。「敏捷度」はサブではない――

 今度は特徴を取ることで変化する能力値から考えてみよう。「厚き信仰」「誠実」といった、いかにも僧侶が取りそうな特徴でも「勇猛性」が上がることがわかる。「居合切り」に「神聖属性」が入っていることを思いだそう。
 つまり、Askは純粋な戦士以外に「神官戦士」を想定しており、攻撃に関しては「居合切り」を兼用するように設計していることが判る。と、なると、戦士系と僧侶系は――その気があれば――両方に適性のあるキャラクターが存在しやすいのではないか? 事実、その通り。
 
 ちょっとメンドクサイが、このやり方を繰り返すことで、本来、意図された能力値とタイプ像、技能と行動の組み合わせがわかるはずだ。

 実践するときは、いろいろな角度から見てみたい。たとえば

 盗賊とその他の職能を分けるのは「器用度」のみであるが、そのキャラクター像は限定されている。

 とかね。


  要素を固持する

 具体的な技能カードの分け方を紹介する。
 といっても、単純だ。「別の能力値で出来る効果は絶対にしない」である。

 わかりやすい例が賢者の塔の「魔法の鎧」「魔法防御」と、聖北教会の「祝福」「聖霊の盾」だ。

 知力で「防御」「抵抗」。精神力で「行動力」「回避」が上げられる。
 仮に、知力で「行動力」が上げられたらどうなるか。じゃあ精神力で「防御」が上げられたっていいじゃないか。じゃあ知力で……
 残るのは、「どちらでも四つの強化がかけられる知力と精神力」だ。これが今日のCardwirth。
 もちろん、精神的特徴でも同じことが言える。

 具体的な効果だけではなく、技の属性や、成功値なども考えてみたい。
「筋力&勇猛性」には「物理的魔法属性」「絶対命中」の技がある。じゃあ、「敏捷性」「器用度」の技には、この二つを絶対に作らない
 なんだクソ弱くなるじゃん! ……と、感じた分だけ、別の部分を強化してみるべきなのだ。
 逆に「筋力&勇猛性」で「居合切り」「双狼牙」以上のスキルはカンタンには作れない。相当な高レベルか、それらの特徴を有した低レベルの小技か。
「穿鋼の突き」の成功率修正が+4なのだから、勇猛性ベースではこれ以上にすることは望ましくない。「居合切り」の+2までで手打ちとしよう……絶対命中をのぞいて。その分威力を上げてみるか。

 視点を変えてみる。知力で防御と抵抗が上げられるのなら、下げられるのは相手(精神性)の「行動力」「抵抗」にしてみる。もちろん、逆もまた真なりだ。

 どうだろう、限定することで、かえってスキルのアイデアが沸いてきたのではないだろうか。 

 おまけとして、しかたなく別の能力値の特徴を採用する場合を考えてみよう。
 ポイントは「常用できてはならない」だ。
 私はもし、適性を変えただけのリューンの技能を作ろうと思ったら、とりあえず単純に6レベル上にするところから始める。「癒身の法」なら7レベル。「双狼牙」なら13レベルだ。
 いやいやそれじゃ使えないだろ、と思ったら、もくろみ通りだと言える。これが2レベルとか、4レベル上じゃあ使ってやろう、と十分に感じられてしまう。一枚スロットを埋めるのに尻込みし、熟考するくらいじゃないと、職能の区別などカンタンに消滅してしまうのだ。
 

  苦手な能力値

 このゲームシステムにおいて、能力値ごとの行動の違いは極めて重要である。
 なぜか? スキルカードに職業ごとの使用制限がないからである。
 比重が大きい、はずなのだ。本来は。

 だれでも「鑑定」「解錠」が出来て、器用度の高い盗賊より優れた成功をする。そういう状況になってしまっている。もちろん、他のスキルでも同様だ。
 気づいてみれば、冒険者は特定の能力値の決まった数字を一つ、二つしか使っていない。

 ASKの作ったこのゲームシステムは、確かに戦闘まわりはガタガタだ。
 が、キャラメイクと能力値に関わるベースシステム、そこから発展した「交易都市リューン」のスキル群のからみは、あらためて批評してみても、良くできている。使わないのはもったいない。

 なんにせよ、作り手の狙いを理解するところから始めるべきだろう。
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