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批評

選択肢のつくりかた

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選択肢のつくりかた

ゲームの基本原則。
「キミは一本の道を歩いている。まっすぐ進むと、正面に壁が見えてきた。
 壁の手前までくると、左右に道が伸びている……」

 いわゆる、T字路である。ダンジョンではよくある光景だ。
 さて、君が冒険者だとして、右と左、どちらを選ぶだろうか?


  動機、材料、理由。

 ここで何のためらいもなく、左右どちらかを選んでしまうような人は、正直、コンピュータRPG脳だと思う。ダンジョンと言うよりは、迷路の延長線だと認識しているタイプだ。
 確かにそれも間違いではない。左右の道を判断する材料がなく、どちらを選んでも変わりがないからだ。いや、そもそも、きた道を引き返しても良いのではないか?
 それは困る。左右どちらかを選んでほしい……どうするか? では、まずは選ぶ動機をつけてみよう。

 「キミは一本の道を全速力で走っている。振り回したブロードソードが天井に大穴を開けなければ、地下水の濁流に追われるということはなかったはずなのだが。
 正面に壁が見えてきた、突き当たりか? いや違う、左右の壁が途切れている!
 ――どちらに飛び込むべきか」


 「逃走」と「時間制限」を付け加えて、動機をつけてみた。左右どちらかの道を選ばないと、濁流に飲み込まれてしまう。
 ただし、この動機は完璧ではない。上記の例では冒険者が必死に逃げているが、あえて濁流に飲み込まれる、という選択肢もあるからだ。
 穴だらけの動機である。GMである貴方が「濁流に飲み込まれると死ぬよ」と指摘することは出来る。誘導を放棄することになるが……
 まず、未完成の部分を埋めることにしよう。左右の道を選んでもらうため、判断のための「材料」を配置することにする。

 「分岐点まで来た。濁流の爆音がすぐ後ろまで迫っている!
 左を見る。まっ暗で、道がどこまで続いているかわからない。
 じゃあ右は……おお、光が見える!」


 動機に材料を配置することで、ようやく選択の意義が出てくる。この状態なら、多くの人が光の見える右の通路を選択するだろう。
 ……まだ完璧ではない? その通り。
 光を洞窟の出口と連想する冒険者はお人よしだ。あるいは、GMが聖人君子なのだろう。でっかいチョウチンアンコウが出てくるようなグループではないということだ。
 冒険者は確証を欲しがっている。あるいはせめて、生を連想させるような材料がないと、釣られてはくれないわけだ。相手の判断する、その理由をよく考えること。

 「分岐点まで来た。濁流の爆音がすぐ後ろまで迫っている!
 左を見る。まっ暗で、道がどこまで続いているかわからない。
 じゃあ右は……縄梯子だ!上の階から伸びている!!」


 材料の明度を一段階あげることで、理由を強化した。これでほとんどの冒険者が、右の道を選ぶことだろう。


 まず動機を作り、判断の材料を当てて、その理由を精査する。これが選択肢づくりの基本である。すべては応用で、上記の三要素を調整することにより、如何様にも誘導が可能になる。濁流を酸の津波に(動機の強化)、左の通路をふさぐ(材料の強化)、古びてボロボロの縄梯子(理由の弱化)などなど。もちろん、複数の材料と選択を組み合わせることも可能だ。
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