もったいないなぁ。と思うことがひとつ。
こういう導入。
(典型として掲載させて頂きました。もう一つの理由は下に) これ、
スタートとしては最悪だって周知されてないんじゃないか。
シナリオ開始の数分で、ずらりと選択肢を並べて依頼の概要を説明する方法。 確かに「すぐ本題に」ってのは間違いじゃないが、問題はこの手法だ。
情報を伝えるさいの基本中の基本として、
話す順番がある。
「怪物が出ました。ドラゴンです。洞窟にうじゃうじゃいます。報酬は400SPです」 こう言われたら、いろいろ考える余地がある。
ヤバくね? 報酬安すぎじゃねーか? とか。
語順を並べ替えてみる。
「怪物が出ました。洞窟にうじゃうじゃいます。報酬は400SPです。ドラゴンです」 報酬は400SPです、まで聞いたプレイヤーは、どのような想像をするかと考えてみる。おそらくゴブリン退治かな? いやオークかも、コボルドだってある。
ここで重要なのは、まったく同じ情報でも、順番を入れ替えることによって
想像の内容と深度がガラリと変わってくることだ。最初の例にあった「ヤバイ。安すぎる」という意見は、二番目の例だと最後のセンテンスが出てくるまで思いつけない。読んだとして、衝撃でかき消されてしまう。
二番目の例はもっと本質的な問題を抱えている。ゴブリンだ、オークだ、などと想像はしてくれるかもしれないが、そも
共通のイメージを提供できていない。 いや、それ以前に
想像すらしてくれない可能性がある。する必要がないからだ。この例だと疑問が見えて初めて、考察の余地が出てくるだろうから。
最初の例は共通のイメージ、話題を想起させられる可能性が高い。
二番目の例はプレイヤーによってバラバラだ。しかも想像すらされない可能性がある。
情報の総量は一緒にもかかわらずである。
これは情報伝達の基礎であり、ストーリーテリングの根幹をなすものだ。
情報を出す順番は物語の最重要案件なのである。
で、最初のSSに戻るけど、
"つかみ"の重要な文章を細切れにしたうえ、グチャグチャに読ませる必要はどこにある。
(このシナリオのSSを使ったのは、最初はちゃんと説明してくれてたから。これが出てきてガクッときてしまった) 歴史は繰り返すのかも この手法をとりたがる心理はわかる。理由は三つ。
1.導入は簡潔にすませたい。
2.プレイヤーに介入してほしい(させたい)。
3.みんなやってるから。 このうち1と2はまったく成立していないし、3は主体がないと暴露しているようなものだ。
まず1。以前解題でも書いたように
「どちらにせよ聞かせたい話なら、小分けにせず一気に聞かせればよい」。こま切れにして選択肢をつけることで、手間を増やし、テンポを壊して、しかも判りづらくしている。
小分けにして何度でも読めるようにすることで、情報をもれなく伝えられると考えているならとんでもない間違いだ。
意識させたいなら話の順番を練るしかない。導入の文章すら読ませられない作品がこのあと何を伝えられるのか。
2。確かにプレイヤーは選択するだろう。というより、選択せざるを得ない。選ばなければシナリオが進まないから。その
興味とは関係なく、プレイヤーはクリックさせられる。つまるところコレは作者の言い訳なのだ。ゲームにしてますよ、という。
3。
「技能交渉」と一緒。気づいたヤツはそっと抜けて距離をとる。
実は
この問題、過去にもあった。もう九年近く前の批評
「白弓の射手」で
犯人をパーティに同行させて緊張感を煽り、村人の話はクリック連打でさらりと読ませ(人物と目的がはっきりしている犯人と会話させるのが、またイイ)、装飾を削いだ展開で、二転三転する小話を丁寧に炙り出した非凡なる佳作。張子の虎や竜頭蛇尾になりがちな他作品と違い、淡味な作品のためにプレイアビリティを選択・追求した点で頭二つ分は抜けている。自然な文体でつづられるテキストも目に心地よく、必要性の無い硬質な文体が氾濫している昨今では、その巧さ、確かな慧眼が際立っている。
非常に古い雑記
「Askシナリオ批評」でも
シティアドベンチャー。聞き込みのシーンほどプレイアビリティが問われるが・・・・・・
とりあえず、クリックだけで進められる点は学ぶべきだった。(誰もが!)
これは言いかえるなら、当時
真逆の作品が氾濫していたことを示している。
一時期、激減したのだが、プレイヤー層が入れ替わるにつれて、また出てきたわけだ。
(もちろん、古参の人たちはこの手のミスはほぼ、撲滅できている。まあ当然か) 最後に、では「箇条書きの選択肢」はどのような状況で使うべきか。
これは
「プレイヤーの欲している情報があるとき」に使う。
PC(キャラクター)ではない。 たとえば最初の「ドラゴンです~」だったら
「ざっと何体くらい?」
「報酬安くない?」
「腹の下に財宝とかあったりします?」 あたりは妥当かと思われる。