……なんだったんでしょうね(笑)。
とっちらかりすぎてて書き出しにも困るありさまだ。
分裂の経緯を大雑把にまとめると
lynaさんが愛護協会に。1.50(既存のエンジンに手を加えたNEXTエンジン)が半公式に。
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さらに改良された1.60が待ち望まれた。が、今までになかったデータの圧縮や、新機能のバックパックが発表されると物議になる。
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オープンソースを掲げていたPyエンジンの代表者、K4nagatsukiさんが「データ構造の隠蔽になる」と圧縮に関して問題提起。
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ごたごた揉めるようになり、lynaさんが愛護協会を抜ける(ここらへんは今回問題にしないので、各自調べてほしい)
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lynaさんが私家版として1.60を発表。愛護協会は1.50の公開を継続。
(その理由はさておくとして)PyはNextシナリオに対応せず。
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これにより1.50、1.60、Pyの分裂が決定的に。 といったところだ。
1.60は圧縮もバックパックも実装された。それだけならいいのだが、付属のエディターでシナリオを開き、保存すると形式が1.60専用になりほかのエンジンでプレイできなくなってしまう。(一応。圧縮をかけないオプションもある)
Pyは、後で書くが、「新機能を深い理由もなく五月雨式に実装」しつづけている。K4nagatsukiさんが言うところの「保守的な態度と前進の両立」を下支えするのは「CardWirthPyとCWXEditorは、CardWirth/WSN仕様の1つの実装である」というロジックである。
エンジン部分に関してPyは私家版ですから、だ。
ちなみにWSN仕様にも問題がある。一方で、ン百を超える1.60シナリオには対応していない。
とにかく、末端の問題まで網羅すると、とてもじゃないが時間がいくらあっても足りない。
だから
二つの私家版に共通する問題を、二つに絞って批判してみよう。 事実上の囲い込み 1.60の時もウソみたいだったが、Pyでも似たようなことが起きるとは、バックパック問題で揉めてるころは思わなかった。ユーザーの囲い込みである。
1.60はすでに説明した通りだ。専用機能を使っていないにもかかわらず、しらず作っていたシナリオがNEXT専用になる悲哀はそこかしこでみられる。
Pyは先にちょっとだけ説明したが「CardwirthPyは実装の一つに過ぎない」という説明をK4nagatsukiさんは周知徹底できているのだろうか。平たく言ってしまえば、
Pyの機能を使ったシナリオはPyでしかプレイできない、ってこと。これは
将来的にもまず間違いない。
いやそれは説明してね? ――実はエンジンとは別の論点がある。
エンジンと並列して、WSN側……シナリオ側にも新仕様を追加している。どういうことか?
「五月雨式に深い理由もなく追加した新機能」は膨大にすぎ、テーマがないために誰かが使っているかもしれないどんなマイナーな機能でも削ることができない。 仮にだが二人目のlynaさんが出てきてWSNに対応する場合、
実装された機能を全肯定した上に膨大なリソースを割く必要がある――やるだろうか?
これは他のPyベースのエンジンで現在進行形の問題でもある。
次の追加機能は納得できないからWSN5に対応しないかも。ただ今は足並みをそろえられているにすぎないのだ。
第三者の越権的改変 私家版に起こりうる問題(実際にPyで起きている)を、掣肘している意見を引いてみよう。
(クリックして展開)
ここには
意思決定者であるK4nagatsukiさんの、クリエイターとしての資質を問う、そして連なるPyの現状を説明する意見が含まれている。NEXTは早々に開発を打ち切ってしまったのでこの問題は
ひとつしか起きなかったが、続いていれば同じ壁にぶち当たったはずだ。
「テーマを設定するのが困難だという理由によります。CWは大きなプラットフォームで、内容は多岐に渡ります。どの方向を見ても「あった方がよい」と考えられるものが多数あります。」
「その手の意見は人によって千差万別で、しかも流転します。そもそも全ての人に意見を聞けるわけでもありません。ですから、開発者の判断はかなりの程度恣意的にならざるを得ません。」
根本的な誤解と見落としがちな点を一つ。シナリオはシナリオ作者が作った著作物であり、CardwirthはGroupaskの作った著作物である、ということ。 例外なくGroupAskのゲームとデザインを使ってきたのだから「Cardwirthとは何でないか」を設定するのは容易なのだ。読み解く力があり、歴史の垢をこそぎ落としてモノを見ようとするならば。
K4nagatsukiさんの発言を一語だけ、より正確な関係を表す言葉に直してみよう。
「その手の意見は人によって千差万別で、しかも流転します。そもそも全ての人に意見を聞けるわけでもありません。ですから、二次創作者の判断はかなりの程度恣意的にならざるを得ません」
急に
無責任に見えてくるのは気のせいではない。よく嚙み砕いてみよう――そのとおりなのだ。
そもそも、既存の創作物は例外なく取捨選択の産物なのだから、
二次創作は恣意的と反発するものである。シナリオ作者に取捨のつもりがなくても、カード画像を74x94にサイズダウンして保存ボタンを押している。これはCardwirthと周辺一次創作者の間に交わされる
契約そのものである。
とても重要なポイントを押さえておきたい。
1.28までとそれ以降では責任の有無が違う。前者はgroupaskの責任になるが、後者は既存を前提とした二次創作者でしかない。
Groupaskとシナリオ作者以外の第三者が「恣意的に」変更を加える――エンジンとシナリオは綺麗に二つに分けられるものでない点に注意したい――つまり無断で契約を書き換えることは、創作者たちの取捨選択を第三者が破ることを意味する。 ウェイトスキップが問題にならず、はるかに影響の軽い
バックパックが大荒れしたのは、まさにこの点にあるのだ。
では
第三者が原作者とシナリオ作者に抵触せず、エンジンを改変する条件とは何か。
互換性を限界まで高めることである。
言葉だけはさんざん聞き飽きているだろうが(w
「同様に動作させることができる」という言葉の解像度がPyは低すぎる。 たとえ話をひとつ。
「スーパーマリオブラザーズが144FPSいっぱい使ってヌルヌル完璧に再現できます」という言葉は違和感だらけだろう。当時プレイしていた人たちはファミコンと同じ挙動をしてほしいはずだし、苦労を重ねたクリエイターはプレイヤー以上にそう思っているはずだ。なんならカセットを
一度フーフーやれたら最高である――それらが今日まったくの
不合理であるにもかかわらず。
互換性とはそういうもので、ここを維持するなら二次創作者ができる改変はごくわずかだと気づくはずだ。
遺産は誰のものなのか Cardwirthは遺産に依存する存在だ。ただし(ほとんどの)製作者は存命だろうし、
決定権の所在はある程度
明快である。
こう考えたときに1.60のバックパックや圧縮が叩かれるのは当然だし、Pyの合議制が大ズレなのもわかるだろう。
とくにk4nagatsukiさんのCardwirthPyは、まるで官僚のようだ。創作者の身を切る痛みをどこにも感じない。
遺された産物をモノとして再分配することしか頭にないように見える。
Cardwirthには原作者がいて、ルールを決めた人がいる。プログラムを組んだ人もいる。Cardwirthでシナリオを公開する人がいる。
あとからエンジンを改変して人を囲い込み、作品を許可なく上書きする人は必要だろうか。
(考えない人のための)総括 前回のコラムで初めて「わからない」って言われたのを思い出したので
(ただアレは射程範囲が広すぎて縮めようもないので、懇切丁寧に応対するしかないんだけど)今回の記事はわかりやすく総括してみる。
「事実上の囲い込み」は、アレで十分わかるだろう。
しいて言うなら、これに関して1.60は本当にヒドイ。
「第三者の越権的改変」は
エンジンは1.28まで原作者の監修だった。原作者の意向なのでシナリオ作者もプレイヤーも納得した。だけどそれ以降は元の開発にいっさい関わりのない人がテーマなく機能を追加している。
カードワースはエンジンだけじゃプレイできず、プレイヤー兼シナリオの作者がシナリオを追加し続けてきたことで成り立っている。原作のエンジンやエディタはCardwirthに必要な機能を厳選することで幅広い人たちに分かりやすく公平な開発環境を作り上げた。シナリオ作者もその範囲内で大いに知恵を絞った。このエンジンとシナリオの創意と判断、そして権利は大いに尊重していいよね。
ここに一次創作者以外の人たちが、彼らに許可なくゲームを改変するのはどういうつもりなのか。特にPyの参加者による合議制はもともとある作品の権利者は不在のまま、二次創作者だけでゲームプレイに影響ある改変を次々行っている。
一応「シナリオ作者のエンジンに対する声明」の例もあげておく。1.60騒動の時に(当時)手持ちのシナリオをNEXT専用にしたABCさんを思い出すといい。
変更の理由は1.60でプレイしてほしいから、ではないはずだ。1.50仕様でも1.60でプレイできるわけだから。自らの作品で立場を表明した意味を大いに汲むべきだし、声に出さずともエンジンに対して一物ある作者たちを過小評価すべきではない。
これはあくまでも大筋の話。細かく読めばいくらでも話は広がるはずだ。